先日、生徒さんの保護者の方にこんな相談を受けました。
「最近、反抗期なのか、何度同じ注意をしても全然言うことを聞きません。叱っているうちに、ついイライラして喧嘩になっちゃうんですよね、、」
大人も、仕事や家事や人間関係で、いっぱいいっぱいなので、「ついイライラして怒鳴ってしまう」ということは多いと思います。
ただ、大人がイライラすればするほど、子どもは「大人がして欲しくないこと」を粘り強く繰り返してくるものです(笑)
今回は「子どもと一緒に振り返る」「子どもと一緒に解決する」という叱り方についてお伝えさせていただきます。
目次
子どもを叱るときに気をつけるべきポイント
怒鳴らない
何回同じことを言っても、子どもが言うことを聞かない。叱ってもちっとも改善されない。そんな時はついつい「何回言ったら分かるの!」「ダメって言ってるでしょ?!」と声を荒げてしまう、という人は多いと思います。
子どもに注意すべきことや指導しなきゃいけないことがあるなら、冷静にきちんと伝えればいいだけなのに、なぜ大人は怒鳴ってしまうのでしょう?
叱るときについ怒鳴ってしまう時、実は私たちは怒る前からイライラしているのです。ガスが漏れている状態なんです(笑) だから、冷静に「なぜこれをしてはいけないか?」ということを伝えるのではなく、カッとなって怒鳴ってしまうのです。こちらの記事でも書きましたが、大人が子どもに言うことを聞いてほしい、という時は、たいてい「大人の都合」があります。
怒鳴ってしまうと、「なぜこれをしてはいけないのか?」という原因は見過ごされ、子どもの中には「怒鳴られた」「怖かった」という記憶だけしか残りません。
性格と結び付けない
子どもを叱るときに、ついやりがちなのは、叱るべき事象を子どもの性格と結び付けてしまう、ということです。
例えば子どもが食卓で、お茶をこぼしてしまったら「ほら!テレビを観ながら食べるから、こぼすのよ!本当にあなたは、集中力がないんだから!!」という感じで「集中力がない」という性質ごと叱ってしまうような感じです。
事実は、ただお茶をこぼしただけなので、「今度から注意しようね」で済むはずですが、性格と結び付けられることで、それが何度も繰り返されると「自分は集中力がないんだ」というセルフイメージが出来上がってしまうのです。
過去のことを持ち出さない
子どもを叱っているうちに、だんだんエスカレートして、過去のことも持ち出して怒ってしまう、というのもよく聞く話です。
1つのことを叱っているうちに、「そういえば昨日も宿題してなかったし」「口ではやるって言いながら、前回もちっともやってなかったでしょ?!」という感じで、あれもこれも追加されるパターンは、子どもにとっては全く効き目がありません。
効き目がないどころか、「なんで、今のことだけじゃなくて過去のことまで怒られているのか、さっぱり分からない」と心を閉ざされるか、「そうか、、自分はよっぽどダメな子どもなんだな」と傷がつくかどちらかになります。
その日の感情で変えない
自分の機嫌や気分によって怒ったり怒らなかったりする、ということもよくありがちです。機嫌がいい時はスルーするけど、機嫌が悪い時は叱る。
このように、その日の気分で叱る基準を変えていると、子どもは、何で怒られているのか分からなくなってしまうばかりか、ひどくなると、親の顔色を見て行動するようになります。
つまり、物事の善悪の基準が「親の顔色」になってしまうのです。
持ち越さない
叱るべきことがあったら、「すぐに・その場で」が基本です。その時はスルーしたのに何日か経ってから「この前のあれだけど、、」と叱り始めたり、いったん怒り終わったことを、数日後に蒸し返したりするのは、効果がありません。
子どもはすでに「終わったこと」だという認識なのに、忘れた頃に叱られると、たとえそれがどんなに正論であっても、子どもにとっては、反省にも成長にもつながりません。
タイムアウトという考え方
子どもに「叱るべきこと」が起こった時は、1章でお伝えしたように、怒鳴ったり過去のことまで持ち出したり、感情に左右されたりしないよう、心を静かに、きちんと伝えることが必要です。
そのためにも、お互いにイライラした状態で冷静さを失っているなら、「時間」を稼ぐ必要があります。
この章では「タイムアウト」という方法をお伝えします。
タイムアウトとは?
タイムアウトとは、いったんお互いがその場を去り、半強制的に「一人の時間」を持つようにする方法のことです。
子どもが、やってはいけないことをした時に、まず大人は「なぜ、それはいけないことなのか?」を説明します。
それでも同じことを繰り返すようなら、お互いの感情が爆発する前に、子どもをいったんその場から離れさせ、一人にします。
子どもは時間の感覚がないし、半強制的に一人にさせられるので、タイムアウトの時間はせいぜい5分までにするべきです。それ以上、隔離させると、不安の方が強くなり、逆効果になります。
タイムアウトのメリット
タイムアウトのメリットは、お互いにとって「冷静になる」までの時間が稼げることです。いったんお互いがその場を離れることで、自分で自分を振り返ることができるのです。
これは、子どもももちろん、自分を振り返ることができるのですが、大人にとっても大きな効果があります。
どうしても目の前にいると、「だから何度も言ってるでしょ?!」「先週も同じこと言ったよね?!」とイライラが収まらず、追い打ちをかけることになりかねないからです。
タイムアウトのデメリット
一方、タイムアウトにはデメリットもあります。それは、半強制的に一人で隔離される、という形態をとるので、子どもの心に「疎外感」や「見捨てられた感」が残りかねない、ということです。
「自省」の域をはるかに超えてしまって、子どもが、打ちひしがれてしまう。という大きなデメリットも含んでいるのです。
子どもの心に、傷を残してしまう場合もあるので、完全な方法でタイムアウトをするのではなく、「冷静になる時間を稼ぐ」というメリットだけを得られるような使い方もされているようです。
それに比べ、次の章でお伝えする「タイムイン」という考え方は、それらのデメリットを含まないので、オススメの方法です。
タイムインという考え方
タイムアウトに対して、タイムインという考え方があります。それは、子どもが何か悪いことをしたら、即座に否定したり、「〜しなさい」と命令するのではなく、子どもが落ち着くまで隣に座り、「時間を共有する」というものです。
子どもは必ず理由があって悪いことをする
タイムインは、「子どもは必ず理由があって悪いことをする」という前提に立っています。こちらの記事でも書いたように、子どもが問題を起こしたり、いうことを聞かなかったりすることの根底には、必ず何かの理由があります。それは、子どもからの大切なサインであることもあります。
「目に見えている部分」=「子どもが起こした行動」だけを注意して正しても、その根っことなる部分を理解して解決しない限り、同じような行動がまた引き起こされるのです。
そのため、タイムインでは、即座に大人が「正しい答え」を教えたり、強制したりすることはありません。大人は、時間をかけて子どもの心を開き、自分で答えを探すのをそばで支える役目に徹します。
「指導者」ではなく「支援者」になるのです。
タイムインのメリット
別の場所で1人で自分と向き合う時間を取る「タイムアウト」と異なり、子どもの気持ちが落ち着き自分で振り返るようになるまで親が隣に座って「時間」を共有しているので、子どもに安心感を与えることができます。
また、いきなり否定したり孤独感を味わわせたりするのではなく、子どもの存在を認め、子どもの行動を受け入れた上で、「支える」というスタンスをとるので、信頼関係が築けます。
そして何より大きいメリットが、根本的な原因を共有できる、ということです。信頼関係や安心感が基になっているので、子どもは心を開きやすく、大人のコメントも素直に聞けるようになります。
タイムインの注意点
タイムインを行うときの注意点は、子どもの心が落ち着き、心を開いて自分の行為を振り返るまでは、注意したり否定したりしないということです。
心が落ち着くまでの過程で、「ちょっと、その言い方は何なの?!」という言葉も子どもの口から出てくるかもしれませんが、そんなときも、できるだけ近くに座って、背中をさすったり肩に手を置いたりして、「安心感」を与えることが大切です。
ここでのポイントは「大人が、冷静になる」ということです。
最初は子どもも気が立っていて、「あっち行って!」と隣に座るのを拒むかもしれませんが、その時にカッとなって「その口の利き方は何なの?!」と大人が冷静さを失わないことです。
タイムインをうまく行うと、子どもの「自己肯定感」も高くなっていくので、ぜひ取り入れたい方法ですね。
私も実際に教室で、いつも人の邪魔ばっかりするお子さんにこの方法をとってみましたが(授業時間の関係で、3分ほどしか隣に座れませんでしたが)、しばらくすると「だって、お母さんもお父さんもおばあちゃんも、◯◯(弟の名前)のほうが、かわいいと思ってるんやもん」と、ポツリと本当の理由を言ってくれたことがありました。
自分は愛されていない、と思って注意を引きたくて悪いことをしていたことが分かったのです。
一見「悪行」に見える子どもの行動の底には、必ず何らかの理由やSOSが隠れています。
私もつい「目に見えていること」にばかり注意がいってしまいますが、「何がこの子に、こういう行動をとらせているんだろう?」という視点で見ることが大切なんだな、、と思います。そここそ、大人が時間をかけて向き合っていくべきことなんだなと思います。
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